彼女のいる背表紙 堀江敏幸

MAGAZINE HOUSE 刊行

今、自分が一番ひかれる作品を書いているのは堀江敏幸だと思う。

なんていうことはない作品世界に、あわく惹き付けられてしまう。

そんな彼がさまざま作品を紹介しているのが、『彼女のいる背表紙』である。

馴染みのない、特に翻訳小説が多いのだが、それぞれの章の最初が何とも言えずに良い感じがして、つい翻訳された本を手に取ってみたいと考えさせられる。

背表紙の向こうに、彼女がいる。
逆を言えば、そこにしかいない。
すぐ近くなのに遠く、
遠いのにひどく身近な友人のように。

ベージの背後から、イメージが湧き立つ。コッカー・スパニエル犬に、映し出されていないフィルムに。